義足は、日常的に使用する中で劣化や故障することもあります。

このページでは、

  • 義足の修理においてどのような制度があるのか
  • 修理を行うのにどのような手続きが必要なのか

を、わかりやすくまとめてご紹介します。

監修: 奥住 典彦(BionicM、義肢装具士)

目次

    1. 義足は耐用年数が定められています
    2. 修理にはどのような制度を利用する?
    3. ソケットの修理について

1. 義足は耐用年数が定められています

義足の修理を公的な補助で行う場合は、厚生労働省が定める制度に則り行います。

この制度においては義足の耐用年数が定められており、この耐用年数を超えている場合には、公的な補助が受けられる一方、耐用年数を超えていない場合や、後述する申請で認められない場合などは自費で修理をしなくてはならない可能性もあります。

図1.厚生労働省が定める修理の制度
(補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準より引用)

図1の赤線部が義足に関しての修理項目です。

現在、義足のパーツはモジュール化されており、各パーツに対し、通常の使用状況において当該補装具(パーツ)が修理不能となるまでの予測年数が耐用年数として示されています。

図1の赤線部の修理項目は、下図2の各項目のようになっています

図2.耐用年数が定められている各パーツ

図2にある吸着バルブやストッキネットが、図1の「その他小部品(消耗品)」に該当し、その他にもシリコンライナーや断端袋が該当します。

2. 修理にはどのような制度を利用する?

修理の場合は厚生用の義足になるため、関連する制度は以下の二つに分けられます。

  1. 身体障がい者手帳の補装具費支給制度
  2. 治療終了後の労働者災害補償保険の社会復帰促進等事業

1.身体障がい者手帳の補装具費支給制度

身体障がい者手帳を利用しての修理の流れは以下になります。

①本人や家族が福祉事務所に申請をします。

②本人や家族が義肢装具製作所に修理の見積書作成を依頼し、見積書を福祉事務所に提出します。

※本人持参でも、郵送や区市町村によっては製作所が郵送でも可能です。

③福祉事務所より更生相談所へ判定依頼(書類判定)が行われます。

④更生相談所は、判定依頼に基づき福祉事務所に判定書を交付します。

⑤本人宛てに補装具費修理決定通知書、補装具費修理券が発行されます。

⑥本人や家族は、義肢装具製作所に修理券を提示し、契約を結びます。

⑦義肢装具製作所にて義肢・装具の修理を行ないます。

⑧納品時に修理券(委任状も含む)にサインと押印、自己負担分の支払いを行います。

以上が修理の流れに関する概要ですが、突然破損した場合など急を要する際は、各地域の福祉事務所や担当の義肢製作所にご相談ください。例外の扱いとして、修理券発行前に、先行して修理を開始できる場合もあります。

2.治療終了後の労働者災害補償保険の社会復帰促進等事業

治療終了後の労働者災害補償保険を利用する場合の流れは以下になります。

①労働局から申請書を取り寄せ、必要事項を記入し事業場の所轄の都道府県労働局に提出します。

②審査(調査)の後、労働局から本人へ承認書が出されます

③申請者は、承認書をもって義肢装具製作所に修理を注文します。

※採型指導が必要な場合は、採型指導医に承認書を提示して採型指導を受けます。

④義肢装具製作所にて修理を行ないます。(採型・適合チェック・仕上げ等。)

⑤義足を受け取り、承認書の受領委任の書類にサインと印鑑を押し義肢装具製作所に渡します。

⑥義肢装具製作所が労働局に費用請求し、労働局が費用を支払います。

3. ソケットの修理について

ソケットの修理に関してはその他のパーツと手続きが異なります。

1.身体障がい者手帳の補装具費支給制度

①本人や家族が福祉事務所に申請をします。

②都道府県によって異なりますが、以下の3通りに分けられます。

※詳しくは住民票を登録している役所の障がい福祉課に確認してください。

a.リハビリテーションセンターや特定の施設に予約を取って出向き、交換が必要かを判定してもらい、その処方を基に義肢製作所が見積もりを作り、福祉事務所に提出する方法。

b.身体障害者福祉法第15条の規定に基づく指定を受けた医師の意見書と見積書を福祉事務所に提出する方法。

c.見積書を福祉事務所に提出する方法。

③福祉事務所より更生相談所へ判定依頼(書類判定)が行われます。

④更生相談所は、判定依頼に基づき福祉事務所に判定書を交付します。

⑤本人宛てに補装具費修理決定通知書、補装具費修理券が発行されます。

⑥本人や家族は、義肢装具製作所に修理券を提示し、契約を結びます。

⑦義肢装具製作所にてソケットの修理を行います。

⑧納品時に修理券(委任状も含む)にサインと押印、自己負担分の支払いを行います。

2.治療終了後の労働者災害補償保険の社会復帰促進等事業

ソケットの交換も他の修理と同じです。

ただ、身体障がい者手帳も治療終了後の労働者災害補償保険の社会復帰促進等事業もソケットの修理は同時進行出来ませんので注意してください。

※画像は国立障害者リハビリテーションセンターの許可を得て掲載しております。

※本コラムは2022年12月時点での情報をもとに作成しております。修理の際などにはお近くの福祉事務所や担当の義肢装具製作所へお問い合わせください。